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2020/04/22

老舗企業のこだわり2

老舗企業の廃業について、環境適応の面から思うところを

書いてみます。これはセンターの案件で実際に直面したこと

から、考えさせられたことです。

前回は、事業の継続以上に後継者に求めるこだわりが強すぎた

ために、廃業の決断に追い込まれてしまったケースについて

書きました。

もう一つのこだわりは、環境変化に対する適応、あるいは

変化に対する心理的抵抗についてです。

実際の面談では事業を買い取る側は、売り手が大事に

していることについては、ほぼ必ず確認します。それは、

これまで、事業が継続してきた中で、引き継がれてきた大事な

ことが何なのか、それをいかに引き継ぐかという点で、買い手側

なりに敬意と配慮と、譲受後の事業展開の可能性について検討する

材料となるからです。

ブランド価値、看板は提供される財・サービスを表象するものと

考えられます。つまり、看板を引き継ぐとは、提供する財・サービスを

同じ品質で提供することが求められます。

ここはまさに老舗企業のM&Aでの大きなポイントになるかと思います。

この同じ品質の引継ぎがマニュアルベースなのか、言語化されない技術

レベルなのかによって大きく異なります。

老舗企業の強みといえば、まさに歴史と伝統から築き上げ、積み重ねられた

技術やそれに裏付けられた財・サービスという価値だと思います。

その地域に根付いた文化といっても過言ではありません。

その反面、長い歴史において消費側の価値観の転換や経営環境の変化は

時には財・サービスがこれまでと形を変えざるものとして提供されることも

あります。

私の友人の老舗は当初、腰掛茶屋で創業しましたが、今は高級懐石料理店

だけでなく、ファミレスまで事業を展開しています。数百年の間には様々な

業態転換がおこっています。

まさに環境変化に適応しながら、顧客への価値を維持し、提供するコアな技術は

伝承され、その事業の名物として引き継がれているのですが、業態は当初の形とは

全く異なっているのです。事業を継いできた時代の継承者はその時代を生き抜くために

大切なものを引継ぎながらも、変化に適応し、今日まで引き継がれてきたのです。

さて、センターの案件では、買い手側から、売り手側にこれまで大切にしてきた

ことについてトップ面談の席で質疑されました。それを踏まえて、買い手側は

譲受後の展開について、売り手に説明をしました。

そこには引き継ぐものと引き継がないものが明確に分けられ、さらに既存の

経営資源からこれまでになかった新たな展開まで織り込まれていました。

しかし、売り手側はその新たな展開が印象的だったのか、持ち帰って、関係者へ

相談したときに、その新たなところだけを強調したがために、猛反発をうけ、

この話はブレイクしてしまったのです。

トップ会談での認識の違いがあったのは、その場にいた第三者としては認識

していましたが、廃業を意思決定した売り手側の関係者が、これまでに大切に

してきたことを維持しつつ、新たな展開、環境変化に適応しようとしている

買い手の考えに賛成できないこだわりが明らかに事業継続の邪魔をしたことは

事実です。さらに、当初、何の条件もなかったはずの後継者についても、

条件を付けて、それ以外では引き継がないという、保守的な言動に至って

しまったのです。前回お話しした、後継者へのこだわりです。

これまで先祖が引き継いできた事業、看板を廃業という形で止めた意識は

まさに環境変化への抵抗と後継者へのこだわりに過ぎないということが

明らかとなった瞬間でした。

先祖から預かった、いや、親から預かった事業は継続させていくことが

その当主の使命であり、事業継続というこだわりのはずが、事業継続のために

細部にこだわった結果、使命を果たすことができなかったという当主の決断が

残念でなりません。

老舗企業こそ、伝統と革新の継承の下で、将来を見据えた経営のお手本で

あってほしいという現場で支援している者の強い願いです。

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