父の店を姉妹で引き継ぐ
家族で生み出す和洋スイーツが人気に
- 親族内承継
- 製造販売業
- 湖東地域
豊郷町で昭和元年に和菓子専門店として創業。3代目の市川芳久さんが若い頃に京都の洋菓子店で修業を重ねた経験を活かし、和菓子の他、ケーキやパンも製造。バラエティ豊かな商品が店内に並び、地元だけでなく遠方からもファンが訪れる人気のお店です。
現在、姉妹で4代目として将来的にお店を引き継ぐための準備を進めています。
Interview
現経営者事業承継について考え始めたのはいつ頃ですか?
私自身、父から和菓子店を引き継ぎましたが、若い頃洋菓子を作っていた経験を活かして、ケーキの販売もやりたい想いがありました。ですが、後継者のあてもなく店は自分の代で終わりかと思っていました。
そんな中、娘二人が戻ってきてくれることになり、店を手伝い始めてくれてから、娘たちには自分にない才能があることに気づきました。私が焼いたスポンジに長女がデコレーションをして、念願のケーキ作りがスタート。次女は店頭のお客様の対応や経理を手伝ってくれました。娘二人がInstagramで宣伝をしてくれたことでたくさんのお客様が来てくださって、今再びやってみる気力が湧き、姉妹への事業承継を前向きに考えるようになりました。
最初はどのようなことから始めましたか?
最初は次女が地元金融機関である滋賀中央信用金庫に経営相談をしたところ、「長期的に寄り添えるサポートがしたい」と担当者の方から事業承継の相談先として、滋賀県事業承継・引継ぎ支援センターを紹介していただきました。センターでは、専門家の方に事業承継計画の策定をはじめ、事業承継へ向けて経理面や手続き面、役割分担など必要な事項について支援してもらいました。
子育て中の姉妹の生活にできるだけ負担をかけずに技術と経営ノウハウを伝承できるよう、私の引退を10年後に設定し、孫の成長も見守りながら徐々に仕事を引き継げるようにプランニングしていきました。
事業を引き継いでもらうことについてどのように感じていますか?
娘二人と働くようになって、店が明るくなり、新しいお客様もたくさん来てくれるようになり嬉しい限りです。事業承継はこれからであり、作成した事業承継計画通りにすべてが進むとは思えません。しかし、この計画からズレたとき、どのように、どのくらいズレたのかを判断できる基準が常にあると、こうなった時はあの方針に戻そうとか、方向転換を考える基準になり心強いと思います。後継者は長女になりますが、娘二人で仲良く力を合わせて承継を進めてくれるとありがたいと思っています。
Interview
後継者お店を継ぐことを決めたときの心境は?
今後もし父が病気や体力的に店を続けられなくなった場合どうするのだろう、と以前から二人で心配していました。私たちに店を引き継ぐ意思はあったのですが、私たちからお店をやりたいと言うとお父さんに仕事を辞めてと言うようにも思え、うまく切り出せず先延ばしにしていました。金融機関に相談したことがきっかけで、事業承継について本格的に親子でしっかりと話し合うことができました。
事業承継の支援を受けていかがでしたか?
私たちはそれぞれに家庭があり子育て中なので、後を継ぎたい気持ちはあってもケーキの製作面や経営、宣伝、お客様への対応など、どこまで出来るか不安もありました。その中で事業承継後の役割分担をどうするか、10年後を展望して無理なく承継するにはどうすれば良いかを一緒に考えていただけたことが心強かったです。専門家の方に客観的に分析してもらって、アドバイスをいただいたおかげで、改めてこれからどうしていくか考えることができました。
また、引継ぎ支援センターから洋菓子と販売促進を得意とする専門家の方も紹介いただき、店頭陳列やPOP作成等の支援をいただけたことも嬉しかったです。
今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?
「どんなときもお客様の希望をかなえたい」という父の想いも受け継いで、姉妹二人で力を合わせて、これから10年かけて“無理なく楽しい承継”をしていきたいと思います。父が大切にしてきた和菓子の技術をすべて引き継ぐことは難しいですが、豊郷では一軒しかない和菓子店なので、ケーキに加えて商品を限定して和菓子の技術を身につけていくことも考えていきたいと思っています。
支援員からのメッセージ
親族内での事業承継は、家族だからこそ難しい部分もありますが、現経営者のお父様は姉妹お二人それぞれの才能を尊重されていて、姉妹お二人にも後を継ぐ意思があったのでお互いの想いを伝え合いながら計画策定を進めることができました。
地元金融機関が事業承継・引継ぎ支援センターにつなげてくださり、派遣専門家が連携してバックアップを行い、地元金融機関へ伴走支援のバトンをつなぎました。
最近では姉妹のご活躍もあり過去最高の売上を達成するなど、きょうかどう様がこれからどんなふうに繁栄されていくのか、楽しみでわくわくしています。
(滋賀県事業承継・引継ぎ支援センタースタッフ)