オーダーメイドでーから
機械をつくり上げる
面白さを受け継いで
- 親族内承継
- 製造業
- 湖南地域
1962年に創業し、冷凍食品のハンバーグや餃子、練りものなどの加工に使用する具練り攪拌のミキサーを主に手掛けてきた滋賀工業所。
オーダーメイドによる機械の設計から製造、販売、保守サービスまでを一貫して手掛けています。
事業改革を行うなかで新製品の開発を進め、あわせて2024年1月の事業承継を目標とし、父から息子へスムーズな代表者移行を進めています。
Interview
現経営者事業承継までの経緯について教えてください。
創業者は私の妻の父で、義母が二代目、私が三代目社長になります。 前職では繊維関連の企業で製品開発や生産管理を担当していました。
若いころから単身赴任が多く、息子や娘は妻の実家であるこの工場で育っています。定年後は勤めていた会社で監査役を務めていましたが、80代の義母が家業を続けるのは難しく、このファミリービジネスを途絶えさせるのは惜しいと感じて2009年に事業を引き継ぎました。
当時の弊社は 技術力が高いものの職人気質で固定的な仕事が多く、新製品の開発や販売ルートの開拓が急務でした。それを実現するには若い力が不可欠と感じ、社長就任から2年後に息子へ声をかけました。
最初はどのようなことから始めましたか?
滋賀県主催のセミナー「後継者育成塾」に息子が参加し、同じころ滋賀県信用保証協会さんから経営改善などについて(一社)滋賀県中小企業診断士協会より専門家派遣を受けることになりました。偶然にもセミナーで講師を務めた中小企業診断士の佐々木武先生が派遣専門家に名前を連ねておられ、メーカーの事業改善にも詳しいということで、生産性向上プロジェクトへの協力を仰ぐことになりました。
月1回の面談を続けていくなかで後継者問題にも着手することになり、紹介を受けた事業承継・引継ぎ支援センターさんからも同じ専門家を派遣してもらいました。佐々木武先生に伴走支援していただいたことで、事業承継計画を策定でき、2024年1月に無事、社長交代の運びとなりました。
後継者の取り組みをどのように感じていますか?
息子の入社から約10年、いまでは技術開発と営業を一手に担ってくれています。息子にとって家業はまったくの畑違いでしたが、私自身の事業承継が第二創業に近いかたちであり、ベンチャーとしてとらえるなら息子も魅力を感じてくれるのではという期待がありました。いまでは新製品の開発にも熱意をもって取り組んでおり、とくに取引先や協力会社との関係を大切にする姿勢は感心するほどです。
お客様のお困りごとに応えてファンを増やしているようにも見受けられ、謙虚に聞く耳をもつことが成長につながっているようで、頼もしく感じています。
Interview
後継者事業を継ぐことを決めたときの心境は?
祖父と祖母がやっていた工場はとても身近なもので親しみも感じていましたが継ぐことは念頭になく、大学院では違う分野の研究に携わっていました。
父が事業を継ぐときにも、この工場を終わらせてはダメだとは思って賛成しましたが自分が関わることはまだ考えておらず、2011年に父から声をかけられたときに改めて家業を見直しました。
まず小さいながらもメーカーであること。部品だけの受注や同じ製品をつくり続けるのとは異なり、顧客の要望に沿って設計し、板金から製品にしていく工程は面白いと感じました。また同じころ工場内で数十年前の祖父の開発手記を見つけ、何かに導かれているようにも思えて、入社と将来の事業承継を決めました。
事業承継の支援を受けていかがでしたか?
コロナ禍では商談の電話がぴたりと止み、大きなダメージを受けました。事業改善と生産性向上をめざすなかで専門家のアドバイスを受け、事業承継の計画も策定することにしましたが、最初は余計な時間を取られるんじゃないか、社外の人に何もかも話していいのか、と不安でした。
しかし支援は無料ですし、専門家の話はとても勉強になり、自分が経営と考えていたことは単なる経理であり、事業を引き継いでいくためには「ヒト・モノ・カネ」のそれぞれの視点をもつことが大切だと実感しました。
第三者のもとで、父と話せていなかったことを洗い出すことができたのも大きな収穫でした。
今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
2023年11月には、県のよろず支援拠点のサポートを受けて初めて展示会に参加し、新商品の小型ミキサーや機械内部の技術を見せるスケルトン模型も作って展示しました。将来的には工場の一角に展示室を設け、独自の技術を売り込んでいきたいと考えています。
また、得意とする攪拌技術だけでなく、その前後の食品製造工程に関わる製品の開発や、廃業する事業者からの独自技術の継承にも取り組み、食品業界以外にも目を向けて挑戦していきたいと考えています。
支援員からのメッセージ
滋賀県事業承継・引継ぎ支援センターと連携し、スムーズに事業承継計画の策定ができました。経営改善を目的に当協会の専門家派遣事業で派遣した専門家が引き続き事業承継計画策定の専門家となり、一貫性のあるアドバイスで実効性の高い支援ができたと思います。
事業承継の時期が明確となり、今後も経営改善に向けた取組みを進めていただけるよう引き続き伴走支援をしていきます。
(滋賀県信用保証協会 経営支援部係長 小谷 修平氏)