事業承継事例 水谷醤油醸造場様

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承継を機に50年ぶりに
木桶仕込みを復活
醤油造りを誇れる仕事に

  • 親族内承継
  • 製造業
  • 湖東地域

水谷醤油醸造場

醤油の製造

滋賀県彦根市日夏町3850
TEL.0749-28-1384

嘉永6年(1853年)に彦根市日夏町で創業、『ヤマタ醤油』ブランドで地元に親しまれてきた水谷醤油醸造場。

大学卒業後、家業を継ぐことを決意した6代目の水谷 優太さんは、新ブランドの立ち上げに取り組み、50年ぶりに復活させた木桶仕込み天然醸造の濃口醤油『日日是好日(ひびこれこうじつ)』を2022年に発売しました。

『日日是好日』には、これからの100年を見つめ、真剣に醤油と向き合い、目指す醤油造りはどうあるべきかを問い続けた優太さんの想いが込められています。

Interview

現経営者
水谷 勝彦 さん

事業承継の相談をしたきっかけは何ですか?

8年ほど前に肺に病気が見つかり、家業をこの先どうしていくか考えるようになりました。当時大学生だった息子への承継を考えると、新たな販路の開拓など、何かしなければ安心して後を継いでほしいとは言えないと思い、商工会議所に相談することにしました。

私の父の代は売り上げのほとんどが個人のお客様でしたが、私の代になって業務用の販路拡大に取り組み、売り上げを大きく伸ばしました。しかし、利益率が悪くなったため、承継に当たって利益の出る体質にどう変えていくかが課題でした。

課題に対してどのようなアドバイスや提案がありましたか?

まず、承継にあたり事業承継計画策定の提案がありました。関心のあった相続税に対しては引継ぎ支援センターを介して専門家の税理士に相談を依頼しました。

事業に関しては、既存のヤマタ醤油というブランドはすでに価格帯が定着していたことから、新たにブランドを立ち上げることで利益を追及していこうということになりました。

中小企業診断土の磯野さんが全面的にサポートしてくれることになり、息子が中心となってブランド創りが進められ、ものづくり補助金で新ブランドのための木桶や圧搾機などを購入することができました。

後継者の取り組みをどのように感じていますか?

私が病気にならなければ、大学卒業後やりたい仕事に就いて、ゆっくり家業を継ぐかどうか考えることができたのですが、自分が帰らなければ家業がまわらないという覚悟で帰ってきてくれました。

意見が合わなくて時に衝突することもありましたが、息子がいなければ木桶の醤油を復活させて新ブランドを立ち上げることはできなかったと思います。何より、私が息子くらいの年齢の時には、あれほど一生懸命に醤油のことを考えていなかったと思うと、彼の健闘ぶりは大いに評価できます。

思い切って新ブランドを立ち上げて良かったと思っていますが、この投資が良かったか悪かったかという答えが出るのはもっと先のことだと思います。息子の次の代、その次の代まで醤油造りが続くことを願っています。

Interview

後継者
水谷 優太 さん

大学卒業後すぐ家業に入ることに迷いはありましたか?

大学時代から何か商売をしたいと思っていました。家業でもできるかもしれないと思って帰ってきたのですが、思うようにいかないことが多く、何の経験もなく人脈もない自分の力不足を実感するようになりました。

辞めて違う仕事をしようかと迷っていた時に、飲食店を経営するお得意様から「辞めないでほしい、うちのために醤油を造り続けてくれ」と言われ、そこまで求めてくださる方がいることを痛感し、残る決意をしました。

新ブランドで昔ながらの木桶仕込みにこだわった理由は?

醤油屋の看板を掲げている限り、醤油造りに力を入れないといけないという思いから、創業170年のこの蔵で、50年間絶えていた木桶仕込みを復活させて本来の姿で醤油を造ろうと考え始めました。磯野さんとの出会いがあって新ブランドを立ち上げることになり、当社の従来品や他社との差別化を目指しました。こうして生まれた『日日是好日』には、「毎日を素晴らしい日々にする醤油を届けたい」という想いが込められています。

約4年の構想を経て、2022年に初めて出荷しましたが売れ行きは好調で、食にこだわるお客様やプロの料理人の方から高い評価をいただき手応えを感じています。会社のイメージアップにつながっただけでなく、私たちのモチベーションも上がりました。

今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?

『日日是好日』をベースにした商品ラインナップを増やし、その魅力を伝える取り組みをしていきたいです。会社をどんどん大きくしたいというより、醤油造りに誇りを持てるような仕事をしたいと思います。醤油造りを見た子どもたちが、「お醤油屋さんってカッコいいな」と思ってくれるようになりたいです。3Kと言われる仕事ですが、それを補う喜びや達成感があるので、その魅力をアピールしていければと考えています。

伝統的なものづくりの承継に直面している方へ伝えたいこと

まずは自分には力がないということを自覚することが大切かなと思います。思い切って声をあげて相談したら、きっと助けてくれる人がいて、一人ではできないことも突破口が見つかると思います。

支援員からのメッセージ

ご相談の当初から関わらせていただきました。勝彦さんとざっくばらんにお話しさせていただき、目的も明確でしたし、優太さんが描かれた将来構想やご努力もよく理解できましたので、ひとつひとつ実現できるようにサポートさせていただいたつもりです。

今後とも水谷さんのご事業の発展のため、「まち医者」のつもりで伴走支援を努めたいと思います。

(彦根商工会議所 中小企業相談所 所長 古原 成規氏)


今回のケースでは、新ブランドの構想段階から関わることができました。デザイナーさんにも活躍をいただくことで、従来品や他社のこだわり醤油としっかり差別化できたのが何より良かったです。

伝統的な事業の承継が難しいのは、儲かる商品がない、利益が出る体質がないからだと思います。お客様が喜んでくださって、利益が出る仕組みをしっかり構築できたら、後継者の問題も自ずと解決すると確信しています。

(中小企業診断士•地場産業共同開発者 磯野 研氏)

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